ストーリー
始まりは、リサイクルショップで見た大量の着物でした。
上質な素材、丹念に織られた生地、美しく染められた色と柄──。
どれも本来であれば高い価値を持つものばかり。けれど、それらはファストファッションと同じような価格で販売されていました。
店を訪れていたお客さんたちは、それらに特に目を留める様子がありません。
私自身も魅力は感じつつも、これを買って果たして使うだろうかと、どこか遠い存在のように感じていました。
その状況を俯瞰したとき、着物文化がなくなるということが現実に起こりえる気がしました。
長い歴史の中で日本人の美意識や生活様式を反映してきた着物。
この豊かな文化を、これから先の時代に繋いでいくにはどうすればいいのかを考えました。
現代人の生活に添った、日常着としての着物。不要な柵から開放された、自由な着物。
行き着いた答えは、着物を「生きたファッションに戻す」ことでした。
これを叶えるべく、古着の着物を使ったリメイクでの創作を開始。
元来の魅力を残しながら洋服視点のアプローチを加えることで、実用性・洋服との親和性を向上させる考察を重ねました。
そうして完成した日常着としての着物を、より多くの方に体験していただきたいという思いから『HEIE(ヘイエ)』は生まれました。
これまでの経験を活かし、取り入れやすいデザイン、扱いやすい素材を厳選し、平衣(へいえ/普段着)としての着物を目指します。
私たちの提案が、既存の着物に対する”特別な場面の為の服”というイメージを払拭し、楽しむ衣文化として着物が繁栄する一助になればと思っています。

デザインの特徴
HEIEの着物は、元来の着物の特徴を継承しつつ、現代のライフスタイルに適したデザインを施しています。
私たちが目指すのは、単に伝統を守るだけでなく、それを再解釈し、現代の生活に溶け込む新しい着物です。
洋服との親和性
HEIEの着物は、洋服と組み合わせても違和感のないデザインが特徴です。
美はディテールに宿ることを心に留め、細かな寸法まで拘ることで、着物の趣を持ちながら洋服好きな方にも取り入れていただけるバランスを目指しました。
洋装との親和性によって、現代の生活にフィットし、より身近なファッションとして感じられるものになっています。
帯を必要としない仕様
着物を日常的に着る際のハードルの一つが「帯」です。帯は美しい装飾品でありながら、締めることが難しく、慣れていない人には扱いが大変です。
HEIEの着物は、帯を使用しなくても着用できる仕様となっています。帯を締めることでより着物らしさのある着こなしも可能です。
帯を必要としなくなったことで、着物を洋服のように手軽に着ることができるようになります。

生地を無駄にしない製図
着物は、できるだけ生地を無駄にしない構成が特徴です。
直線で裁断されるため、生地の切り落としがほとんどなく、効率的な衣服作りが可能です。
HEIEでもこのアプローチを踏襲、直線で構成された製図で生地を最大限に活用することで、資源の無駄を省いています。
反物想定の設計と和裁技術
HEIEの着物は、着物生地でも同様の仕立てができるよう、反物(着物を仕立てるために織られた巾40cm程の生地)での製作を前提にした設計になっています。
また、和裁工場での縫製も拘っている点です。HEIEの着物は、和裁の知識を持った方々のサポートを受け、和裁の技術をもって作られています。
既存の素材や環境で作ることで、着物の生産環境を含めた発展に貢献できればと考えています。

※現状、袴ボトムスのみ国内和裁企業の中国工場で製作しています
アイテム詳細
- Tarikubi-Top:垂領トップス

①日常着の着物に見られる筒袖・巻袖をベースにした、袂(たもと)のない袖設計。袖が邪魔になることがなく、洋服とイヤリングも容易になりました。直垂の袖を参考に袖口に布を足すことで、反物で製作した際も裄が足りなくなるという問題が起きにくくなっています。
②脇縫いにポケットを配置。実用性を向上させながらトップスインの際などにも外観を損なわない仕様です。
③フロントはボタン留めの為、前合わせが逆になる心配もありません。ボタンホールは開けずにループ留めにすることで、元来の着物のように生地を再利用する際にも扱いやすくなっています。
④テーラードジャケットを参考にした、ジャストサイズでおおよそおしりが隠れる着丈。わずかに前下がりになった裾は洋服とも相性がよく、インした際も裾が出にくいバランスです。
- Mo-Bottom:裳ボトムス

①フロントはホック留め。ウエストゴム入りで、幅広いサイズに対応。着こなしに合わせてウエスト位置でも腰骨位置でも着用可能です。
②二重になったベルトループ。様々な太さ、デザインのベルトが使用できます。
帯を締める際の腰ひも通しとしても機能します。(腰ひもを使わなくても着用できます)
③裾に向かってわずかにテーパードするシルエット。下半身を綺麗に見せる、単体でも優秀なスカートです。
- Hakama-Bottom:袴ボトムス

①ウエスト内側にゴム入り、フロントはファスナー付き、ホック留め。男女ともに帯がない状態で履くことを前提とした設計になっています。
②袴らしい、ゆったりとしたシルエット。馬乗り袴から小袴や野袴、軽衫など複数の袴を基に、パンツ型のボトムスとして日常使いしやすいバランスを追求しました。
③投げ(脇の縫い合わされていない部分)の内側にポケットを配置。中に生地が入ることで、トップスインしなければいけないという制限がなくなりました。
④適度に裾が窄まるテーパード型。タックの裾部分を縫い留めることで折り目のケアもしやすくなっています。
タックの縫い留めを解くとより袴らしい、フレアパンツのようなシルエットに変化します。
取り扱いについて
洗い方
HEIEでは、できるだけ家庭でのケアがしやすい生地を選んで制作しています。
洗い方については選択表示をご覧ください。
畳み方
垂領トップス
①ボタンを外し、広げます。

②衿先を外側に折り、首元を手前に折り返します。

③片側の衿の上に反対側の衿を重ねます。(上側の身頃がくずれますが問題ありません)

④上になった身頃の脇線と袖先を、反対側の脇線、袖先に重ねます。

⑤袖、袖先を折り返した後、身頃を二つ折りもしくは三つ折りにします。

裳ボトムス
①ホックを外し、広げます。

②片側のウエスト帯を半分ほど折り返します。

③折り返した帯先と反対側の帯先を重ねます。

④上になった身頃の脇線を反対側の脇線に重ねた後、身頃を二つ折りもしくは三つ折りにします。

袴ボトムス
①ファスナーを閉めた状態で広げます。

②足先内側の縫線を合わせ、股下の部分を前に引き出します。ウエスト帯はループに通します。
この時、前後のウエストと足先を持って引っ張るとタックが綺麗に重なります。

③帯を中央で合わせ、ウエスト巾に納まる長さに折り重ねます。股下部分は内側のタックの中に入れ込みます。

④帯をループの中に入れ込み、身頃を三つ折りにします。
